大阪高等裁判所 昭和27年(ネ)219号 判決
控訴代理人は原判決を取消す奈良地方裁判所昭和二六年(ヨ)第七〇号仮差押申請事件につき昭和二十六年八月三十一日同裁判所がなした仮差押決定はこれを認可する訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする旨の判決を求めた。
被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた当事者双方の事実上の陳述は原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。
(疎明省略)
三、理 由
被控訴人が元奈良県生駒郡南生駒村村長であつて、昭和二十六年四月中同村長を退職し奈良市小西町十八番地奈良県町村吏員恩給組合から同組合条例に基づき、退職給与金五万六千四百七十二円を給与されることになつたこと、並びに控訴村において被控訴人に対し金十六万九千六十三円八十銭の横領金返還請求債権を有するとし、右債権の執行を保全するため奈良地方裁判所に被控訴人が奈良県町村吏員恩給組合に対して有する右退職給与金五万六千四百七十二円の債権の仮差押を申請し(同裁判所昭和二六年(ヨ)第七〇号仮差押申請事件)昭和二十六年八月三十一日同裁判所において控訴村の申請通りの仮差押決定がなされたことは当事者間に争のないところである。しかして奈良県町村吏員恩給組合条例によれば町村長、助役収入役副収入役及び地方自治法第百七十二条に規定する吏員等は毎月その受ける給料の百分の二に相当する金額を組合に納付し、在職三年以上十七年未満で退職したときは退職前の給料年額の十二分の一に相当する金額に在職年の年数を乗じた金額の退職給与金を支給せられるものであつて、右退職給与金は官吏の恩給に比すべきもので、これを受ける権利は受給者の一身に専属し他にこれを譲渡することを許さないものと解すべきのみならず、同条例第十一条には右権利はこれを譲渡し又は担保に供することを得ない旨規定せられてあつて、これに依るも右権利の譲渡を許さないことが明瞭であるから、これが差押又は仮差押をなすことは許されないものと解するのが相当である。してみると右と同趣旨の理由の下に奈良地方裁判所昭和二六年(ヨ)第七〇号仮差押申請事件につき、昭和二十六年八月三十一日同裁判所がなした仮差押決定を取消し控訴村の本件仮差押命令申請を却下した原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。
(裁判官 三吉信隆 萩原潤三 小野田常太郎)